「夫婦二人と子供二人」これがドイツのいわゆる普通の家族のイマージに違いない。これは日本でも同じだ。では、日本とドイツの家族はほぼ同じだと言えるのだろうか。
まず、大きく違うのはカップルが結婚するがとうかである。ドイツでは結婚は義務ではないが、日本では違う。1960年代には、日本でもドイツでも、結婚しなければカップルは一緒に暮らせなかった。結婚してから、やっと二人の共同生活が始められ、そして子供が作れたのだ。また、結婚によってはじめて、本当の意味での成人として、社会に受け入れてもらえだ。当時、結婚しないで同居していたカップルは、ドイツでもかなり批判されたはずである。
その後、ドイツでは結婚についての見方が変化し、結婚しないで同居できる環境になった。一方、日本では、現在でも30年前とほとんど変わらず、結婚は共同生活を始める条件であり、大人としで認められる条件である[I]。そのため、若い人の7割以上が結婚に肯定的である。「結婚する必要はない」「結婚しないほうがいい」という否定的な意見は二割以下。ドイツでは結婚に肯定的な若い人は四割以下、否定的なのは五割で、日本との違いは大きい。
日本では、一般的に言って、結婚せずに同居することはまだ「良くないこと」とされている。どんな親でも、子供が異性と同居するのを心からは喜べないだろう。そのため、1992年に行われた調査でも、18才~34才[II]の若い人の1.1%[III]だけが異性と同居中だった。(ドイツでは8.1%)[IV]
結婚しなければ一緒に生活できないなら、日本人は早く結婚するはずだとだれでも思うだろう。しかし実際には、日本人の結婚する年齢は非常に高い。しばらく共同生活してみてから結婚することができる他の先進国よりも、高いと言えるのだ。1993年には男性の初めての結婚平均年齢は29.7才、女性は27.1才だった。これは、学歴が高くなり、なかなか職に就けなくなったことと、適齢期(結婚しなければならない年齢)を気にしない人が増えたことが原因に違いない。
前にも言ったように、日本社会では結婚が非常に重要だと考えられている。なかなか結婚しない人は、「だれか好きな人でもいないのですか」「そろそろ結婚でも考えたらどうですか」と聞かれるのがしょっちゅうだ。家族からの圧力や、社会的圧力が独身者にかかる。しかし、結婚しない人は増えていて、1990年には、35才から39才の女性の7.5%、男性の19.0%独身だった。この人たちは、独身主義者というよりは[V]、理想の相手が見つけられなければ、結婚しなくてもよい、と考えているらしい。
「結婚」を考えるなら、「離婚」というテーマも忘れられない。日本でも離婚率は上がっていて、過去30年間で二倍になった。しかし、それでもドイツより低い。結婚前に一緒に住んでみて、うまく行くかどうか試せないのに、である。それに、離婚の手続きも非常に簡単で、二人が希望すれば、すぐに別れられる。そうなのに、離婚が少ないのは、離婚への偏見と、(持に女性の)離婚後の生活の保障がないこと、それに、子供を育てるためには両親が必要だという考えが非常に強いこと等が理由にあげられるだろう。日本では「結婚すれば子供を持つのが当たり前だ」、「子供のために妻は仕事をやめるのが当然だ」という子供中心の意見が結婚している女性の90%を越える。だから「子供がいるから、別れられない」と思って離婚をあきらめる人が多いのは、簡単に想像できるはずだ。
それでは、次に「子供」について見てみよう。他の先進国と同じように、日本でも子供の数はどんどん減っている。一人の女性が生涯に生む子供の数[VI]は、1960年の2.00人から、1990年には1.54人に減少している。(平均寿命がのびているので、人口はまだ増えているが、2011年には減少が始まるはずである。)では、一人っ子の家庭が多いか、というと、そうとは言えない。結婚している女性の子供の数は、昔も今もほぼ同じ2.2人なのである。そのため、「夫婦二人と子供二人」という家族の形は、今でも一番ふつうだと考えられる。一人の女性が生涯に生む子供の数が減っているのは、結婚しない人が増えているためらしい。
日本では結婚が共同生活の社会的条件なので、結婚していない両親から生まれた子供の数は、大変少ない。1990年に生まれた子供のうち、わずか1.1%だけだった[VII]。想像できるように、ドイツではかなり多く、10.5%(旧西ドイツ)だった。ドイツでは結婚しない同居も新しい「家族」の形として認められているので、問題なく子供を持てるし、差別も心配しないでいられるからだろう。日本でのそのような子供への差別はとても厳しい。法律上の差別[VIII]がなくなったのも、まだ数年前のことなのだ。
結婚と並んで、日本の家族がドイツのと大きく異なる点は、夫婦とその親との同居である。ドイツでは1.6%の世帯しか親、子供、孫の三世代が一緒に暮らしていないのに、日本では17.2%の世帯が三世代同居をしている。世帯ではなく、家族でみると、子供のいる家族の30%以上が、おじいさんやおばあさんと暮らしている。この点は、ドイツと日本の家族を比較するちき、忘れてはならない点である。これについでは、また考えることにする。
Literatur:
Ralph Lützeler, 1996, „Die japanische Familie der Gegenwart – Wandel und Beharrung aus demographischer Sicht, Duisburg“
I | 結婚は…条件である | Aus diesem Grunde werden häufig jüngeren Leuten, die noch keinen Partner haben, von Verwandten, Bekannten und Organisationen potentielle Partner vorgeschlagen. Ob der Betroffene den vorgeschlagenen Partner auch tatsächlich heiratet, liegt allein in seinem Ermessen. Die Entscheidung fällt normalerweise nach einigen Verabredungen. | ||
II | 18才~34才 | 読み方:18才から34才 | ||
III | 1.1% | 読み方:いってんいち | ||
IV | „5th Word Youth Survey“ andere Zahlen: siehe Literatur | |||
V | というよりは | statt … sondern (eher) | ||
VI | 一人の…子供の数 | Totale Fertilitätsrate | ||
VII | 1.1% | Die Rate der nichtehelichen Kinder in Japan ist viel geringer als beispielsweise in den katholischen Ländern wie Spanien (8%) und Italien (5.8%). Selbst in Griechenland mit seiner griechisch-orthodoxen Kirche weist eine Rate von 2,1% nichtehelicher Kinder auf. | ||
VIII | 法律上の差別 | Nichteheliche Kinder wurden in Japan bis vor einigen Jahren auch im Familienregister gesondert eingetragen, so dass sie bei der Durchsicht der Eintragungen sofort als solche identifiziert werden konnten. Außerdem wurden sie bei der Erbschaft sozusagen nur als „halbe Kinder“ berücksichtigt. Gesellschaftliche Vorurteile gegenüber nichtehelichen Kindern sind heute noch deutlich vorhanden. Sie werden z.B. bei der Eheschließung oder Arbeitssuche benachteiligt. Aus diesem Grunde fühlen sich die meisten Paare, die die Institution Ehe eigentlich ablehnen, zur Ehe gezwungen, sobald sie ein Kind erwarten. |
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